解散にあたって


 2003年2月3日に特定非営利活動法人「学術研究ネット」が発足してから、早19年が過ぎました。その前の準備段階を含めると、20年以上の月日が経ちました。
 設立当初の理事・監事・会員は、専門分野が主に物理学の方達でした。豊富な科学的素養と長く研究・教育の現場を経験した人材が多くを占める学術研究ネットは、大学・研究所等の研究の現場に通じる人脈を活用し、31回の講演会と5回のシンポジウムを開催してきました。我々の目的の一つである学問の成果を社会・市民に広く正しく伝えることを実践してきたと自負しています。

 初代の故小林K郎理事長(2003年度〜2004年度)は、初代理事長としてこの学術研究ネットの礎を築いて下さいました。柔らかいお話の中にもアカデミックな厳しさをいつも感じました。
 2代目の青野修理事長(2005年度〜2019年度)は、長きに渡ってこの学術研究ネットを支え続けて下さいました。いつも変わらぬ平静な態度で接して下さいましたが、時にユーモアあふれるお話に青野理事長の本来の姿を垣間見ることができました。
 3代目故八木江里理事長は(2020年度)は、長く副理事長として活躍して下さり、特に講演会については豊富な経験と様々な人脈からテーマ・講師を考えて下さいました。いつ何を相談しても頼りになる存在でした。
 このように学術研究ネットは代々素晴らしい理事長に恵まれて、発展してまいりました。

 学術研究ネット設立の大きな動機付けの一つである若手研究者支援のため、原則としてパーマネントな研究職についていない人を講師としたセミナーを2003年から年に1〜3回、合計25回実施してきました。大崎弥枝子副理事長が人脈を駆使して様々な分野の講師にお願いしてきました。最近では「学術研究ネット」で発表したことも若手研究者の業績の一部に数えられるようになったと聞いています。
 この活動を通して学術研究ネットの目的の一つである異分野・世代間交流を実践してきました。
 NPOを設立するにあたって、内閣府から認証を受ける全国規模のNPOにするため、主たる事務所を東京に、従たる事務所を桑原雅子理事在住の大阪に設けました。特に東京の事務所を「セマントイ」(エスペラント語で“種蒔く人々”)と名付け、出発点としました。
 大阪事務所からは、桑原雅子理事と故後藤邦夫正会員により、「NewsLetter」(8〜10頁)が毎年発行され、広い視野を養うことができ、本当に楽しみでした。
 林春雄監事には会計監査を長年にわたってして頂きましたが、それだけにとどまらず、理事と全く同じようにこの会に関わって下さり、いつも力強く思いました。
 NPO準備段階から一緒に活動してきた故小林和子理事、穏やかに寄り添って下さった故福田恵美子理事、時に厳しいご意見も頂いた故数野美つ子監事、陰ながら見守って下さった故井口てる子監事と、直接携わって下さった方々には感謝しかありません。

 国際物理オリンピックに、日本は2006年のシンガポール大会から参加していますが、元江沢洋理事が講演者である2003年・第3回講演会「国際物理オリンピックと日本の物理教育」が一つの土台となったのではとひそかに思っています。
 2014年のシンポジウム「日本と世界の教育」ではオランダ在住のリヒテルズ直子氏達をお招きして行いましたが、その際、ネットのサイトや新聞社に宣伝し、150名の定員で募集したところ、ほとんど若いお母様方で満員という「学術研究ネット」始まって以来の聴衆でした。

 振り返ってみますと、「ニュートリノ」、「エントロピー」、「地球温暖化」、「原発」、「日本のエネルギー問題」、「地震」、「宇宙」、「人類学」、「認知症」、「栄養学」、「生活習慣病」、「環境問題と消費者責任」、「パラダンススポーツ」、「平和論」、「人間性」、「言語」、「子供や医学系の教育」等々、講演会の主題は多岐にわたっています。それぞれ専門の講師をお招きし、丁寧で分かりやすいお話を伺うことができたことはありがたいことでした。この素晴らしいお話をもっともっと大勢の方々に聞いて頂きたかったと、力及ばなかったことが惜しまれます。

 私は一貫して、我が家の東京事務所(セマントイ)で、ホームページ作成・管理や、講演会・シンポジウム・セミナーのチラシ作成・宣伝・会場申込・講演資料作成や、理事会・総会の案内・議事録作成や、会計を担当してきました。
 皆様のご協力で無事過ごせたことに安堵しております。
 私自身、講演会で様々な分野のお話を聴講し、講演会後の懇親会で講師と直接お話する機会を得て、知らず知らずのうちに幅広い知識を得、広い視野を得られたことは、得難い大切な宝物のような時間だったのだと今になってしみじみ実感しています。

 最初の一粒の種がここまで成長してきました。
 様々な方々の力をお借りしながら、力を尽くしてここまでやり切れたことをありがたく思います。
 学術研究ネットという樹木からこぼれ落ちたこの種をいつか何処かで引き継いで下さる方々へ後を託したいと思います。

 これまでご協力・応援・ご支援して下さった方々に心より感謝申し上げます。
 ありがとうございました。


            2022年6月出版「学術研究ネット―歩みと思い出―」より抜粋