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 講 演 要 旨


林  春雄

R.Clausiusの蒸気機関について 要旨

 高圧蒸気機関の出現という技術分野での大きな進展に伴い、
1840年代はその基礎となる断熱膨張過程での水蒸気の振舞いについての正確な情報が必要不可欠となった。
この状況を受けRegnaultは1847年に精密な実験データを発表した。
しかしこのデータは、それまでの技術者の基礎であった熱量保存法則を否定するものであった。
同時にこれはClausiusらの力学的熱理論を構築する上でも、実験データとの整合性が問われる重要な問題であった。
その意味で、Clausiusにとっては当初からこのような技術分野からの現実的問題と力学的熱理論の構築とは
平行した一体の問題であったと考えられる。
Clausiusのこの第5論文はいままで取り上げられることはほとんどなかったが、
エントロピー概念への足掛かりを得た第4論文までの成果を取り入れ、
蒸気機関の理論に対する一つの結論を与えた論文と見ることができる。
この論文でClausiusは、当時蒸気機関工学の理論的支柱であったde Pambourの「蒸気機関の理論」を取り上げ、
このPambour理論が設定している条件で得られた数値を、同じ設定条件で力学的熱理論から導かれる数値とを比較検討し、
実験データとのよい一致が得られることを示している。
ここでは、Clausiusが一体の問題として進めてきた実用面に対し、彼の新しい力学的熱理論による定量的な応用例を紹介し、
蒸気機関学の進展にも少なからず寄与したことを、この論文の比較検討の概略を通して提示したい。


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