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 講 演 要 旨


柿原 泰

「福島原発被害にたいする“福島県民健康管理調査”の問題点」 要旨

 2011年の東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所事故をうけて、福島県では「県民健康管理調査」(2014年4月に「県民健康調査」と改称)が行なわれている。調査が始まって約4年の現在、甲状腺検査も2巡目にはいり、子どもの甲状腺がんの多発状況がますます明らかになってきているが、いまだに「原発事故の影響とは考えにくい」などと、被害状況を認めようとしない。この「県民健康調査」は何のため、誰のための調査なのだろうか? その目的に適った調査が進められ、調査の結果が生かされているのだろうか?

福島県「県民健康調査」とは
 基本調査(全県民の行動記録から被曝線量を推定)と詳細調査(健康診査、甲状腺検査、こころの健康度・生活習慣に関する調査、妊産婦に関する調査)
「県民健康調査」の問題点
 前提(←問題あり):被曝線量は低い、線量‐影響(量‐反応)関係の知見から放射線による被害は(ほぼ)ない
【目的】
 調査開始の際の目的は「県民の不安の解消」「安全・安心の確保」、健康を「見守る」
 現在は、「被ばく線量の評価」とともに「県民の健康状態を把握」し、「疾病の予防、早期発見、早期治療」につなげ、もって「県民の健康の維持、増進を図る」
【調査の内容】
・被曝線量は低いのか?
・甲状腺検査(先行検査 [ベースライン?] と本格検査 [2014年から])、子どものみ?
・甲状腺がん以外は? その他の疾病、不調など、健康状態の把握がほとんどなされない
・福島県に限定(周辺地域の調査の必要性)
【その他】
・開始までの経緯:調査計画立案の経緯、調査体制(検討委員会など)の組織化
・運営の問題(検討委員会に「秘密会」)、情報公開の不徹底
・調査の倫理問題の検討のあり方(県立医大の学内倫理委員会のみ)

【主な文献】

  日野行介『福島原発事故 県民健康管理調査の闇』(岩波書店、2013年)。
  柿原泰「福島『県民健康管理調査』の現在史へ向けて」、『生物学史研究』No. 87(2012年9月)、21-25頁。
  同「原爆影響調査から福島県民健康管理調査へ――放射線被曝の歴史の観点から」、『科学史研究』第3期第54巻(2015年1月)、47-50頁。


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