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 講 演 要 旨


村山  斉  東京大学数物連携宇宙研究機構長,兼カリフォルニア大学バークレイ校教授



<講演者プロフィール>

1964年生まれ。東京大学大学院博士課程修了後、
1991年東北大学助手、
2000年米カリフォルニア大学バークレイ校教授などを経て
2008年数物連携宇宙研究機構長就任。
2004年よりカリフォルニア大学バークレイ校MacAdams冠教授。素粒子理論におけるリーダーの一人であるとともに、基礎科学分野における若き指導者の一人。

<講演者・新聞記事の抜粋>

1. 世界的に激しくなる「頭脳」獲得競争。日本の大学が世界のトップレベルの研究者を引き抜く時代がやってきた。
  国が10年間で百数十億円を投じる国内5ヵ所の「世界トップレベル研究拠点」。
  その一つ,東京大の数物連携宇宙機構の機構長として米国の名門カリフォルニア大教授から移り2008年1月4日に着任した。
  年収は東大総長より高いが,「管理職手当を除けば,米国時代と同じです」。
  機構にはノーベル賞受賞者やフィールズ賞の受賞者を含む200人が集結。
  すばる望遠鏡やスーパーカミオカンデも駆使して,宇宙の起源や運命といった人類最大のなぞに挑む。
  機構長として最初に指示は,午後3時に全員参加のティータイムを設け,研究会では自由討議の時間をたっぷりとること。
 「日本では質問したり,思いつきを話したりするのを恥ずかしがるが,全く逆。
  新しいアイデアは自由な議論から生まれるのです」。(朝日新聞2008年1月5日の記事)

2. 3月の土曜日(2009年),昼下がり。東京都西東京市にある科学館の一室で村山斉(45)は,市民や学生に語りかけた。 
  「あるのかないのかよくわからなかったオバケみたいな素粒子ニュートリノは,太陽で生まれ,1秒間に1兆個くらい私たちの体を通り抜けています。
  その風を感じた方,いますか?」
  参加者を見渡し,笑顔で村山は言う。「おかしいなあ,アメリカでこの質問をすると,手を挙げる人が必ずいるんですが」。会場は爆笑に包まれた。
  村山は,一般向けに易しく説明する素粒子の語り部として,欧米,豪州でも大人気だ。 
  素粒子物理の話題に,「ニュートリノ振動」という変身現象がある。村山が説明すると,こんな風になる。
  「アイスをあっちからこっちに持って行く間に,ストロベリー味からチョコ味に変わったら驚くでしょ?それが素粒子の世界に起こったんです」。
  村山には,語り部のほかの顔がある。「数物連携宇宙研究機構」の機構長。
  世界の第一線研究者が集まってくる研究拠点を設けたいという文部科学省の方針のもと,東大が威信をかけてつくったプロジェクトの最高責任者である。
  小学生のころ,村山はぜんそくで学校を休みがちだった。自宅で,物理を専門としていた父の本をあさり,高校レベルの微積分を身につけてしまった。
  父の勤務によるドイツ生活を経て国際基督教大高校に入学すると,物理の教師に滝川洋二(現東京大学教授)がいた。
  科学実験の楽しさを易しく解説する,理科教育の第一人者。滝川の指導のもと,村山はありとあらゆる実験に手を出した。
  村山がいま,易しく語るのは,滝川の影響だろう。東大の物理学科に進み,「もっとも根本的なことを知ろう」と素粒子研究室に入る。(朝日新聞2009年4月7日の記事)

<補記1>

数物連携宇宙研究機構は,東大の柏キャンパスにあり,凡そ200人の研究者が研究に専念しています。
3割以上が外国人で,公用語は英語です。もう少し専門的な説明は,日本物理学会誌63巻11号(2008年)867-870頁に掲載されております。

<補記2>

「天使と悪魔」はダン・ブラウン著書のサスペンス小説で、ロン・ハワード監督、トム・ハンクス主演で2009年5月15日に日本で公開された。

(あらすじ)
ハーバード大学のロバート・ラングドン教授は、ある日セルン(欧州原子核研究機構)の所長、マクシミリアン・コーラーからとあるアンビグラムの紋章についての説明を求められる。
その紋章は、同研究所の科学者レオナルド・ヴェトラが何者かによって殺害された際、彼の胸に焼印として押されていたものだった。
レオナルドは最近、核エネルギーを凌駕する反物質の生成に成功しており、その反物質も犯人によって盗まれていたことが判明する。
ラングドンはその紋章を、伝説的な秘密結社・イルミナティのものと断定するが、犯人と結びつけることには躊躇していた。
彼は手がかりを求め、殺害されたレオナルドの娘、ヴィットリア・ヴェトラとともにローマへと向かう。
 一方ローマでは、新しい教皇を選出するコンクラーベの真っ最中であった。
にもかかわらず、新教皇の有力候補(プレフェリーティ)の4人が揃って失踪していることに、コンクラーベ進行役の枢機卿であるモルターティは苛立ちを覚える。
さらに、離れた場所では、ヴァチカンの警護を任されたスイス衛兵隊隊長、オリヴェッティのもとに監視カメラから奇妙な映像が映し出されていた。
そんな中、前教皇の侍従、カルロ・ヴェントレスカのもとにイルミナティを名乗る者から突然の電話が鳴る。
かつて科学者を弾圧したキリスト教会に復讐するため、1時間に1人ずつ、拉致した新教皇候補を殺害してゆくという。
 殺害が行われる場所のヒントに気付いたラングドンは、殺害を阻止し、盗まれた反物質を発見すべく推理と追跡を開始する。


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